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東京高等裁判所 昭和56年(行ケ)5号 判決

原告主張の審決取消事由の有無について検討する。

1 成立に争いのない甲第二号証の一、二、同第三号証によると、本件意匠と引用意匠とは、共に、その基本的形態として、原告の主張する(イ)ないし(ニ)の構成を有している点で一致しているが、ただ、本件意匠には、半透明体の本体(擬餌体)の下端に逆円錐台状基部が設けられている点で、このような基部を有していない引用意匠と相違していることが認められる。

2 ところで、前掲甲第二号証の一、二によると、本件意匠における逆円錐台状基部は濃調子のものであり、かつ、これには、半透明体の本体に嵌入させるために右基部と一体的に形成された円筒状の突起部があること、右突起部は、このように半透明体の内部に位置している関係上、外部からは淡く半透視できるだけであるが、その直径は逆円錐台状の基部(外部に現われている部分)の他の先端(細い側の端)部分の直径とほぼ同一であり、その長手方向の長さは右基部の長さの二分の一足らずのものであること、右基部の本体長手方向における長さは、本体の長さの約五・三分の一であり、右基部に前記突起部を加えた長さでも、本体の約三・八分の一であることが認められる。

3 以上の事実から明らかなとおり、本件意匠にあつては、逆円錐台状基部と本体との間に色調において差異があり、また、右基部には円筒状の突起部があつて、これが外部からも半透視できる態様のものであるところ、審決は、この点について具体的に論述していないことは原告の主張するとおりである。しかし、前記認定のとおり、基部と突起部及び本体の相互の大きさの対比関係、右突起部の大きさ及びそれが、本体に嵌入され、かつ、外部から淡く半透視できるにすぎないものであること、外部に現われた基部の形状は、本体の外郭形状と基調を一にし、両者が相まつていわゆる逆ヘチマ形を形成しているものであること及び前掲各証拠によれば、本件意匠における本体と引用意匠のそれとを対比すると、そのくびれが引用意匠のものの方がやや強いようにも見うけられるが、これは、両者を近接させた上子細に観察してようやく感得できる程度の差異でしかなく、殊に、本件意匠における本体と逆円錐状基部とが相まつて形成された逆ヘチマ形の形状を、引用意匠の本体の形状と対比すると、両者の間にほとんど差異を認め難い。

4 以上、本件意匠と引用意匠との間に存する相違点は、両意匠がイカの釣針に係るものである関係上、イカの捕捉という目的・機能面からの構成上の制約があるとする原告の主張を考慮に入れても、全体として観察をすべき両意匠の対比において、前記の(イ)ないし(ニ)の基本的形態が同一であることによつて受ける看者の強い共通感を左右するほどのものであるとは認められないのであり、したがつて、本件意匠は、引用意匠に類似するというほかはない。

また、成立に争いのない甲第四号証ないし同第六号証も右判断を左右しうべきものではない。

そうすると、審決の判断は相当であつて、原告の主張は理由がない。

よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却することとする。

〔編註その一〕 本件における審決理由の要点は左のとおりである。

1 本件意匠の構成、意匠に係る物品、登録出願日、登録日は、前項に記載のとおりである。

2 本件意匠の要旨は、次のとおりである。

「本体を、上半部に張りをもたせ、下方をしぼつた円柱状(いわゆる倒立ヘチマ形)とし、かつ、全体を半透明体として、その内部、長手方向に設けた細円柱状芯杆が透視できるように表わし、下端に逆円錐台状基部を設け、その下方に、針金を束ねてなる軸杆を垂下させ、軸杆の下端と中間部に、二個の環状釣針を設け、環状釣針は、多数の二又状釣針の一方を軸杆周側に添設して、その部分に短い円筒を嵌着して軸杆に固着してなるもので、本件上端及び軸杆下端に円環を設けた態様。」

3 昭和四七年二月五日発行の雑誌「水産世界」二月号の広告ページに記載の株式会社福島製作所のオツパイ針のうち「手づくり連結針」と称するイカ(タコ)釣針(以下これを「引用意匠」という。)の要旨は、前2の本件意匠の要旨中の傍線部分を、「本体下方に、針金を束ねてなる軸杆を垂下させ、」と読み替えるほか、これと同一である。

4 そこで、両意匠を対比するに、両者は、本体下方の基部の有無について差異があるが、その余の部分は全く共通している。ところで、右基部の有無が、全体に与える影響について考えるに、基部の本体長手方向における長さは、本体の長さの六分の一弱しかなく、かつ、基部の外郭形状は、本体の外郭形状とほぼその基調を一にするものであるから、外観上目立つたものということはできず、部分的な差異にすぎない。

5 そうすると、両意匠は、類似しているというほかはない。よつて、本件意匠は、意匠法第三条第一項第三号の規定に違反して登録されたものであるから、その登録を無効とすべきものである。

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